日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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短命花ムクゲの花弁老化とエチレンおよびポリアミン代謝
*徐 相規小林 勝一郎藤原 伸介
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p. 529

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抄録
高等植物ではエチレンとポリアミンはそれらの生合成において,メチオニンから合成されるS-アデノシルメチオニン(SAM)を共通の中間基質としている.本研究では,短命花として知られるムクゲの開花および老化に伴うエチレンの生成ならびに花弁中のACC,結合体ACC,ポリアミン含有量の変化あるいはポリアミンやポリアミンの合成阻害剤による処理が花弁の老化に及ぼす影響を調べ,ムクゲの花の老化におけるエチレンとポリアミンの作用ならびにそれら代謝の相互関係について検討を行った.ムクゲは開花前から花弁中に微量のACCを含有し持続的に少量のエチレンを発生したが,花弁の老化開始前後から結合体ACCの増加と共にエチレン発生量の急激な上昇が認められた.花弁中のポリアミンについては,プトレシンやスペルミジンが大きな変動を示さなかったのに対し,スペルミン含有量はエチレン発生量が上昇するのと対照的に老化の進行に伴って減少した.SAMからのACC合成を阻害するAVGは,エチレン生成を抑制し,花の老化を著しく遅延すると同時に花弁中のスペルミン濃度を高く維持した.一方,SAMの脱炭酸酵素の阻害剤MGBGは,スペルミン合成を抑制するとともにエチレンの生成を促進し花の老化時期を早めることから,エチレンとポリアミンの生合成における共通基質SAMの流れがムクゲの花の寿命に大きく係わっていることが示唆された.
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© 2007 日本植物生理学会
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