日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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紅藻Cyanidioschyzon merolaeにおけるオルガネラDNA複製の同調機構の解析
*小林 勇気兼崎 友黒岩 晴子黒岩 常祥田中 寛
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p. 530

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抄録
Cyanidioschyzon merolae(シゾン)は、核、葉緑体、ミトコンドリアが1つずつしか存在しない極めて単純な細胞構造をもっている。シゾンでは、核、葉緑体ミトコンドリアの分裂が協調的におこることから、核とオルガネラが共調したDNA複製周期を持つと考えられる。しかし、その同調機構は明らかになっていない。本研究では核、葉緑体、ミトコンドリアそれぞれのDNA複製のタイミングと細胞周期との関係を調べた。
同調培養したシゾンの核、葉緑体、ミトコンドリア遺伝子の特異的配列を用いたReal-time PCRを行い、核、葉緑体、ミトコンドリアのDNA複製期を同定した。これと並行してBrdU取り込み活性の測定、顕微鏡観察によるBrdU取り込みの局在解析もおこなった。その結果、細胞内のDNA複製は、まず葉緑体、ミトコンドリアから始まり、その後核の複製が行われる事が明らかになった。次に種々の阻害剤の添加実験を行った結果、核のDNA複製には葉緑体、ミトコンドリアのDNA複製が必要であり、葉緑体とミトコンドリアの複製はcyclin-CDKに制御されていない事が明らかになった。この事から核のDNA複製は葉緑体もしくはミトコンドリアからの何らかのシグナルにより制御されている事が強く示唆された。現在、葉緑体もしくはミトコンドリアから核へのシグナル伝達物質の同定を行っている。これらを踏まえたシゾンにおける核・オルガネラDNA複製の同調機構のモデルを提示する予定である。
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© 2007 日本植物生理学会
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