抄録
雌雄異株植物ヒロハノマンテマ無性花変異体K034には、無性花と雌様花が9:1の割合でつく。無性花は雌蕊も雄蕊も発達しないが、雌様花は不完全ながら雌蕊が発達し結実する。K034の第4whorlは野生型雌より狭く、雄株由来と推察されるのにもかかわらず、雌様花を付けることは興味深い。雄蕊と雌蕊におけるBクラス遺伝子SLM2とCクラス遺伝子SLM1の発現を調べると、ステージ8において雄花の雄蕊では両者の発現が続いたが、無性花と雌様花の雄蕊では両者とも消失し、発育不全を起こした。無性花と雌様花の雌蕊ではSLM1は完全には消失しなかった。両性花変異体R025は、理研の加速器で、重イオンビームを乾燥種子に照射して当代で単離した。R025はモザイクで、ほとんどの枝には両性花をつけたが、一部の枝には正常雄花のみがついた。両性花を自家受粉させるとともに、両性花の枝を挿し木することで遺伝的安定性を調べている。両性花の雄蕊はステージ8でも伸長し続け、雌蕊は広い第4whorlをもっていた。その結果、成熟雄蕊は野生型雄と同じで、心皮数5本の成熟雌蕊をあわせもつ、自家受粉可能な両性花となる。核型解析とSTS解析から、無性花変異体K034のY染色体は雌蕊抑制領域の一部と雄蕊促進領域の一部を欠損することがわかっている。両性花変異体R025もY染色体をもつ。STSマーカーでY染色体の欠損部位を調べている。