抄録
様々なゲノムデータベースの情報や大規模な実験データから、分子の相互作用を予測し、機能が未知な遺伝子に関する情報を得ることは、生物学、インフォマティクスの両方の発展にとって重要である。今回、我々はカーネル法に基づくネットワーク推定法をラン藻Anabaena sp. PCC7120の窒素飢餓応答に適用して、機能的に関係する遺伝子をネットワークとして予測した。データセットとしては、マイクロアレイ、系統プロファイル、遺伝子ロケーション、という異なるデータを統合して用いた。その結果、KEGG PATHWAYデータベースに登録された既知の遺伝子群となんらかの関係を持つと考えられる1348個の遺伝子が予測された。それらの遺伝子群には、窒素飢餓応答に関与することが知られているものに加えて、機能未知の遺伝子群が含まれていた。さらに、Pfamによる機能ドメイン予測と窒素代謝関連遺伝子の転写因子であるNtcAの結合モチーフ予測という別の視点を加え、予測した遺伝子の選抜を行った。その結果、KEGG PATHWAYネットワークに外挿する形で窒素代謝に関係すると考えられる新規の遺伝子候補が得られた。今回の解析手法で示された結果は、ポストゲノム時代における実験デザインに有効であると考える。