日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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リノール酸高含有形質転換イネにおけるいもち病菌抵抗性の解析
*屋良 朝紀八丈野 孝Jean-Luc Montillet長谷川 守文楠見 健介瀬尾 茂美射場 厚
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p. 593

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抄録
多不飽和脂肪酸から生成する脂肪酸酸化物は、植物の病害抵抗性において重要な役割をもつと考えられている。我々は、リノール酸 (18:2) を不飽和化するω-3デサチュラーゼ (OsFAD7、OsFAD8) の発現を抑制した18:2高含有形質転換イネ (F78Ri) において、いもち病菌抵抗性が向上することを明らかにした(第47回植物生理学会年会)。今回は、F78Riにおいていもち病菌抵抗性が向上する原因を調査した。イネがいもち病菌に感染すると、ハイドロキシド合成が誘導される。この合成経路において、18:2とリノレン酸 (18:3)はそれぞれハイドロペロキシド (HPODEs、HPOTEs) を経て、ハイドロキシド (HODEs、HOTEs) へ変換される。これらの脂肪酸酸化物のいもち病菌への抗菌活性を測定したところ、18:2由来のHPODEsやHODEsは、18:3由来のHPOTEsやHOTEsよりも高かった。F78Riのハイドロキシド含量を測定した結果、HODEs含量は、野生株と比較して明らかに増加した。よって、18:2由来のHPODEsやHODEsの蓄積が、F78Riのいもち病菌抵抗性の向上に寄与することが示唆された。これらの知見は、植物の含有脂肪酸組成の人為的制御によって耐病性作物の作出が可能であることを示している。
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© 2007 日本植物生理学会
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