抄録
脂質を介するシグナル伝達径路は植物の病害抵抗性反応の誘導において重要な役割を果している。シロイヌナズナにおいて、ステアリン酸 (18:0)をオレイン酸 (18:1)に変換する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子SSI2を欠損した変異体は、ベト病菌やシュードモナス菌、キュウリモザイクウィルス等、広範な病原菌に対して強い抵抗性を示す。本研究では、SSI2のイネホモログOsSSI2の病害抵抗性における機能解析を行った。
RNAiによってOsSSI2発現を抑制した形質転換体イネ(OsSSI2-kd)は、壊死班や軽度の生育遅延、PR遺伝子やBTH誘導性WRKY遺伝子の恒常的発現および幼苗期におけるいもち病抵抗性を示した。これらの結果から、OsSSI2の反応産物はイネの病害抵抗性において負の制御に関わっていると考えられる。また、OsSSI2の発現は幼葉で最も高く、生育に伴い低下することが分かった。この発現様式はイネの生育に伴って発現するいもち病抵抗性と関連している可能性が考えられる。現在、OsSSI2-kdのサリチル酸含量や脂肪酸組成の測定およびマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行っており、それらの結果についても合わせて報告する。