抄録
シアノバクテリアAnabaena属やNostoc属は、特徴的なカロテノイドとしてケトミクソール配糖体を持つ。ミクソール配糖体の糖部分は種ごとに多様性があるが、Anabaena 7120はフコースを結合している(Takaichi et al. (2005) PCP)。リコペンからケトミクソール配糖体への生合成経路で機能が同定された酵素は、ミクソール配糖体をケト化する酵素CrtWのみである(Mochimaru et al. (2005) FEBS Lett.)。さらに我々はミクソール合成に関与する水酸化酵素CrtRも同定した(2006 植物学会)。
Synechocystis 6803のGDP-フコースシンターゼ破壊株ではミクソールに糖が結合しないと報告されている(Mohamed et al. (2005) J. Bacteriol.)。本研究では、その遺伝子に相同性のあるAnabaena 7120の遺伝子all4826の破壊株を作成した。NMRなどの解析の結果、破壊株ではミクソールにフコースの異性体(メチルペントース)が結合していた。この異性体は、ミクソール配糖体の糖として報告されているα-L-フコース、α-L-ラムノース、α-L-キノボースではないことがわかったが、同定には至っていない。 Anabaena 7120の場合、Δall4826はGDP-フコースを合成できないが、フコーストランスフェラーゼの基質特異性が緩やかなために、フコース異性体をミクソールに結合していると考えられる。