抄録
緑色硫黄細菌は鉄硫黄型の光化学反応中心を持つ絶対嫌気性光合成細菌で、硫化物やチオ硫酸塩などの硫黄化合物を電子供与体として光合成を行う。硫黄化合物から光化学反応中心への電子伝達系路についてはまだ不明な点が多い。今回我々は、緑色硫黄細菌 Chlorobium tepidum の細胞抽出物から、チオ硫酸塩を酸化し光化学反応中心複合体への電子供与体となるシトクロム c554 を還元する酵素として、3つの蛋白質画分(Factor I, II, III) を単離精製し、その活性を反応速度論的に解析した。Factor I は SoxY と SoxZ の 2 種のペプチドからなるヘテロダイマー、Factor II は SoxB のモノマー、Factor III はSoxA、SoxX、CT1020 の 3 種のペプチドからなるヘテロトライマーとしてそれぞれ精製された。チオ硫酸からシトクロム c554 への電子伝達には Factor I、Factor II、Factor III の 3 つの蛋白質画分を必要とし、ひとつでも欠くとシトクロム c554 の還元は見られなかった。チオ硫酸濃度を変化させ、シトクロム c554 活性を測定したところ、反応速度は Michaelis-Menten 型となり、Vmax は 15 µM Cytc 554 reduction/µM each factor/min となり、Km は 0.24 mM となった。