抄録
[目的]ソース葉における光合成産物の炭素分配は、ショ糖合成系により主に調節されていると考えられている。本研究では、ショ糖合成系の律速因子の1つである細胞質FBPaseの増強が光合成炭素代謝に及ぼす影響を検討するために、ラン藻FBP/SBPaseを細胞質へ導入した形質転換植物(TcFS)を用いて、高CO2環境での光合成特性を比較検討した。
[方法・結果]高CO2 (1200 ppm) 環境では、野生株と比較してTcFS株の側枝数、葉数および湿重量の増加が認められた。また、同条件でのTcFS株の光合成能は、野生株と比較して有意に増加していた。光合成代謝中間体を比較した結果、野生株では上葉にヘキソースの蓄積が認められたのに対し、TcFS株の上葉ではヘキソースの蓄積は認められず、下葉および側枝葉にショ糖およびデンプンの蓄積が認められた。以上より、細胞質FBPaseは、ソース葉の細胞質においてヘキソースからショ糖へと効率よく転換するために機能し、それによる糖分配の変化が光合成機能の制御および形態形成に影響を及ぼしていると考えられる。