抄録
これまでに様々な生物で、転写されるが翻訳されないRNA、すなわち非翻訳RNA(ncRNA)が同定されており、その生理・生化学的機能が解析されている。原核生物では特に大腸菌でncRNAの予測、同定、解析が進んでいるが、ラン藻においてもその存在が明らかになりつつある。我々は、環境応答におけるncRNAの役割を検討するため、材料としてSynechococcus elongatus PCC 7942を用い、低CO2条件下で発現量が変化する、新規な低分子量ncRNA候補の探索を行った。100bp以上の長さのORF間の配列に対応する順逆両方向のオリゴヌクレオチドスポットがあるDNAマイクロアレイの解析結果を用いて、発現量が高く、かつ隣接したORFとは異なる発現様式を示すORF間領域を、炭素欠乏ストレス応答性のncRNAが存在する領域の候補として10種類選び出した。これらの領域の発現を、Northern法によって解析した結果、3領域について炭素欠乏条件下で発現量が増加する低分子量RNAを検出できた。現在、これら低分子量RNAの転写領域を決定し、生体内における機能の解明を目指して解析を進めている。