抄録
光合成の初期過程で不可避的に発生する活性酸素は、光化学系IIの修復に必要なタンパク質の新規合成を阻害する。本研究では、活性酸素に対する消去能力を高め、光合成の修復を向上させるために、Vibrio rumoiensis strain S-1 のカタラーゼ遺伝子 vktA および Synechocystis sp. PCC 6803 のスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子 sodB をラン藻 Synechococcus sp. PCC 7942 で過剰発現させた。vktA 過剰発現株は、弱光下において、1 mM H2O2 の存在下でも生育し、H2O2 に対する耐性が増大した。また、1 mM H2O2 の存在下で 500 μE m-2 s-1 の強光を照射した場合、vktA 過剰発現株は野生株より高い光化学系II活性を維持していた。さらに、タンパク質の in vivo ラベリング実験により、この酸化ストレス条件下で、光化学系IIの修復に必要なD1タンパク質の新規合成が促進していることが明らかになった。一方、 sodB 過剰発現株は 1.5 mM メチルビオロゲンの存在下でも生育し、スーパーオキシドに対する耐性が増大した。現在、vktA と sodB を共発現させた二重変異株について、光化学系IIの酸化ストレス耐性を解析している。