日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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地衣類共生ラン藻の地衣体内3次元的分布と水ストレス耐性機構
*岩崎 郁子小村 理行鈴木 英治佐藤 朗原 光二郎小峰 正史山本 好和伊藤 繁
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p. 653

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抄録
地衣類は菌類と藻類の共生体であり、乾燥耐性能を示すものが多く、環境の状態を知る「指標生物」と言われる。シアノバクテリアを共生藻(以下、共生ラン藻)とするモミジツメゴケ(Peltigera polydactylon秋田県)の共生ラン藻を分離し、共生と非共生状態における生理学的特性を調べた。
1. 共生ラン藻は地衣体の上皮層近くの藻類層に分布し、色素組成は大部分の細胞が典型的なシアノバクテリアの吸収と蛍光スペクトルを示した。
2. PAMシステムによる非破壊的な光合成活性測定では、共生・非共生ともに、乾燥条件では光化学系II由来の蛍光は消失するが、灌水後1分程度で回復し、乾燥と灌水の繰り返しに対して再現性を示した。
3. 極低温(5 K)での定常蛍光スペクトル測定を行い、蛍光寿命をナノおよびピコ秒時間分解能で観察したところ、乾燥状態ではPS II由来の蛍光が見えないが、灌水すると1分以内でフィコビリンから系IIへのエネルギー移動が観察され、系Iへのエネルギー移動も見られた。
4. 採取地の2定点(高尾山と田沢湖)の共生ラン藻ゲノムDNAからニトロゲナーゼのαサブユニット遺伝子(nifD)全長をクローン化して配列を決定した。2株間でのNifD翻訳配列の相同性は97.8 %であった。既知の糸状性ラン藻の遺伝子と比較した結果、これらの共生ラン藻はNostocよりAnabaenaに近縁の種であることが示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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