日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

サイトカイニンが水稲葉身の光合成速度に及ぼす影響とその要因
*吉田 宰大川 泰一郎臼田 秀明平沢 正
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 654

詳細
抄録
水稲品種アケノホシは日本晴に比べて,乾物生産量が高く,このことには登熟期の葉身の老化が遅く,光合成速度が高く維持されることが関係する.アケノホシの光合成速度が高い要因には,葉身のRubisco含量が多いことがある.また、アケノホシは葉の老化を抑制する木部出液中のサイトカイニン含量が高いことが認められている。しかし、サイトカイニンがどのように葉の光合成速度に影響を及ぼすのかは明らかでない。そこで本研究では,日本晴にサイトカイニン(BA)を散布し,光合成速度に及ぼす影響とその要因について検討した.
BA散布個体の大気CO2濃度における個葉光合成速度は対照個体と比べて有意に高く推移し、葉内CO2濃度が一定のときの光合成速度はBA散布個体が高く維持された.止葉のA-Ci曲線は,BA散布個体の初期勾配が有意に高く,炭酸固定効率が高く維持された.また,BA散布個体の最大光合成速度(飽和CO2濃度)も有意に高く,リン酸の再利用及びRuBP再生能力が高く維持された.葉身のRubisco含量は,BA散布個体で有意に高く推移し,rbcLrbcSmRNA蓄積量もBA散布個体で有意に高くなった.
これらのことから,サイトカイニンにより水稲葉身の光合成速度が大気CO2濃度で促進される大きな要因は,rbcLrbcS転写蓄積量が増加し,Rubisco含量が高く維持され,炭酸固定効率が高くなることが示された。
著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top