抄録
一酸化窒素(NO)は、病害抵抗性や花成時期の制御を始め、植物の重要な生理作用に関わる情報伝達物質として注目されてきている。しかし、その情報伝達機構はあまりよくわかっていない。
我々は、高等植物におけるNO情報伝達機構の解明に向け、Deinococcus radiodurans由来のNO合成酵素(deiNOS)遺伝子を恒常的あるいはエタノール誘導で一過的に過剰発現させるシロイヌナズナ(cdeiNOS並びにideiNOS)をそれぞれ作製し、解析を進めている。 昨年度の本大会において、cdeiNOS株のロゼッタ葉における約25,000遺伝子の発現様式をマイクロアレイ解析し、これまでに報告されているNO応答遺伝子の多くが変動していない事を報告した。
本研究ではNO応答遺伝子を調べるため、エタノール処理したideiNOS株の遺伝子発現様式をマイクロアレイ解析した。その結果、1731個の遺伝子(887個で増加、844個で減少)で発現量に顕著な差が見られた。興味深いことに、今回の結果でもこれまでに報告されているNO応答遺伝子の多くが変動していなかった。顕著な差が見られた遺伝子のうち、多くは代謝系の遺伝子であったが、転写因子やストレス応答に関わる遺伝子も変動していた。現在、cdeiNOS株とideiNOS株において同様な発現様式を示したNO応答遺伝子について詳細に解析している。