抄録
目的:異なる下顎開口量によって生じる気道形態の変化を観察し,閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者に対する口腔内装置製作に際して適切な開口量を検討すること.
方法:顎口腔機能に異常を認めない正常有歯顎者18名に対し酸素飽和度低下指数(ODI)の測定を行い,ODI<5の者を低ODI群(13名),ODI≧5の者を高ODI群(5名)とした.スパイロメーターを用いて被験者の下顎50%前方位での4つの異なる開口量(0mm,5mm,10mm,15mm)における最大中間吸気速度(FIF25-75)を測定した.また各開口量およびコントロールとして中心咬合位におけるMRI撮像を行い,正中矢状面での軟口蓋最上方点から喉頭蓋基底部の気道体積および水平断での軟口蓋最後方点における気道前後径を測定した.
結果:両群とも開口量0mmから開口すると呼吸量は増加する傾向にあったが,気道体積には同様の傾向は認められなかった.さらに上気道を上方,下方に分割して検討したところ,開口により変化するのは主に上気道上方であることが示唆された.
結論:開口量による差をはっきり示せない現状では,睡眠時無呼吸症候群に対して口腔内装置による治療を行う際は,開口量の増加に伴う患者の負担なども考慮して必要以上に開口させないことが重要であると考えられた.