抄録
樹木の分子育種において、花芽形成は重要なターゲットの1つであり、改変すべき点が多数残されている。私たちは、ユーカリの花芽形成の改変・制御を目標とし、これまでに花芽形成時に発現する遺伝子のEST解析、さらにMADS-box遺伝子の単離を報告してきた。最近、遺伝子の発現調節に低分子RNAが関わっていることが数多く報告され、花芽形成においても重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこでユーカリの花芽形成時における低分子RNAによる調節機構を解析するため、花芽形成時に発現するマイクロRNA(miRNA)の探索を行った。ユーカリのつぼみから全RNAを抽出し、電気泳動によって低分子RNAを分離・回収後、MPSS法により22塩基を解読し、約120,000種の配列を決定した。次に、rRNA, tRNA, snRNA, scRNAと相同な配列を除いた後、残った配列に対応するユーカリゲノム配列を検索した結果、約30,000種について、22塩基の相同配列を含む周辺ゲノム配列を取得した。これら約30,000種のゲノム配列についてmiRNAに特徴的な二次構造の予測解析を行った結果、ユーカリの花芽形成時には約500種のmiRNAの候補が存在していることが明らかとなった。これらの配列の中には既知のシロイヌナズナやポプラのmiRNAと相同な配列も含まれていたが、多数の新規なmiRNAの候補が見出された。