日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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オオムギの葯初期発生過程における高温障害と遺伝子発現-高温による葯壁細胞崩壊プログラムの早期実行-
*押野 健安彦 真文齋藤 るみ子一石 英一郎遠藤 誠川岸 万紀子東谷 篤志
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p. 675

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抄録
植物の生殖成長過程は温度変化や乾燥などの環境ストレスに対して感受性が高い。特に、高温により雄性不稔となることがさまざまな植物種で報告されている。ここでは、各穎花間での同調性の高いオオムギを用いて花粉形成過程における高温障害について実験を行った。オオムギは高温条件において、雌蕊の発生・分化に異常は生じないが、葯の発生では、細胞分裂の停止や液胞化の進行、ミトコンドリアや核膜、粗面小胞体の異常、葉緑体の異常な発達などが観察される。また、葯壁細胞の早期崩壊や花粉母細胞の減数分裂への早期移行がおこり、結果として花粉形成に異常を生じ、雄性不稔となる。この高温障害に関わる遺伝子発現を調べるために、22K Barley1 GeneChipを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。ストレス関連の遺伝子群は、高温により幼穂と芽生えで共に発現が増加するものと芽生えでより大きく発現が増加するものがみられた。一方で、ヒストンやDNA複製関連、ミトコンドリア関連、リボソーム関連などの遺伝子群は高温により幼穂で特異的に発現が低下した。また、減数分裂特異的な遺伝子や葯特異的LTP遺伝子は高温によって早期に発現が増加した。以上の結果から、オオムギの高温障害は、花粉形成の過程において葯壁細胞の早期消失や減数分裂への未成熟段階での移行など、発生プログラムが高温より早期に実行されることに起因するという作業仮説を提唱したい。
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© 2007 日本植物生理学会
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