抄録
私たちは2002年度本学会において、核タンパク質輸送体成分のイネインポーティンα(IMPα)のうち、光照射で発現が下方制御されるIMPα1aと特異的に結合する新奇タンパク質(IABP4と仮称)を報告した。IABP4の機能を調べるため、シロイヌナズナにホモログAt2g06210が存在することから、実験室での解析が容易なシロイヌナズナでT-DNA挿入によるノックアウトラインの表現型解析を行った。ホモ挿入個体の同定のため、Salk研究所のデータベースで見つけた2ラインと、かずさDNA研究所のタグラインから独自のスクリーニングにより同定した1ラインの合計3ラインの種子を播種し、芽生えからDNAを調製して特異的プライマーによるPCRを行ったが、どのラインにもホモ挿入個体は検出されなかった。そこで、ヘテロ挿入個体における種子形成率を調べたところ、野生型では約10%しか見られない種子形成不全が全てのラインにおいて約40%にまで増加しており、IABP4の遺伝子欠損が胚性致死の結果、種子形成不全となる可能性が示唆された。
しかし、At2g06210については、最近、花成関連遺伝子vip6/elf8として私たちと同じSalkタグラインを含む変異体を用いた表現型解析を含む報告が出された(Oh et al., 2004; He et al., 2004)。現在、私たちの結果との矛盾点をどのように説明できるのか苦慮している。