抄録
アブシジン酸(ABA)は、種子の休眠や乾燥・低温などの環境ストレス応答に中心的な役割を果たす植物ホルモンである。我々は更なるABA関連突然変異体を分離する目的で、シロイヌナズナCol株を対象にABA類縁体PBI-51用いたスクリーニングを行いABA高感受性変異体ahg1~7(ABA hypersensitive germination)およびahg11~16を得た。このうち、マッピングによりAHG1とAHG3がそれぞれAt5g51760およびAtPP2CAであることを明らかにし、その後の解析によってAHG1とAHG3が種子におけるABA情報伝達経路の負の制御因子としてはたらく事を証明した。さらに、AHG1は種子の成熟過程および乾燥種子で特異的に働きその機能は一部AHG3と重複することを明らかにした。これまでに複数のPP2CがABA情報伝達経路の負の制御因子であることが明らかになっているが、生体内の基質は不明であり、分子レベルでの機能はわかっていない。これまでに主に酵母ツーハイブリッド法によってPP2Cと相互作用するタンパク質が報告されている。我々はPP2Cの生体内の基質の候補を得る目的で、新たにプロテオミクス的手法によってAHG1およびAHG3と相互作用するタンパク質の探索を試みている。本学会では、以上の研究結果を照会すると共に、二次元電気泳動を用いたahg変異体のリン酸化タンパク質の解析、プルダウンアッセイによる相互作用タンパク質の探索についても報告する予定である。