抄録
シロイヌナズナの chlorina5 (ch5)は葉緑体プロテアーゼ(CH5)をコードする遺伝子に塩基置換が入った変異体である。この葉緑体プロテアーゼはチラコイド膜局在の膜貫通域を持つ亜鉛プロテアーゼである。近年様々な葉緑体プロテアーゼが報告され、それぞれの変異体について解析が進められている。しかしCH5の機能や基質は明らかではない。ch5変異体は成長の初期において野生型に近い緑色をしているが、成長するにつれてクロロフィルやカロテノイドが減少していく。我々はこの表現型に注目してch5変異体の退色機構とプロテアーゼの機能の解明を試みた。RT-PCRによりCH5の遺伝子発現を解析したところ、成長の後期になるほどより発現が高くなることが明らかになった。変異体の形質が後期でより明確になるのはCH5の活性が後期になるほど高くなるためであると予想される。また多くの変異体でクロロフィル量が減少するとLHCが分解するため、葉緑体内でチラコイドのスタックが減少することが報告されているが、ch5変異体においても同様の結果が認められた。さらにタンパク質組成はLHC以外に大きな差はないことから、CH5はチラコイド膜に存在する微量のタンパク質を基質にしていることが予想される。以上の結果からCH5の機能と他の葉緑体プロテアーゼとの関連について議論する。