抄録
種々の植物遺伝子が糖栄養源の変動に応答した発現制御を受けている。マイクロアレイを用いた解析は、シロイヌナズナ全遺伝子の約5%が糖に応答したmRNAの誘導を受け、またその80%以上は糖によるmRNA誘導がタンパク質合成の阻害でブロックされる二次応答性のものであることを示している。我々は、糖によって短時間にmRNAが誘導され、その誘導がシクロヘキシミドで阻害されない推定転写因子を選抜した。SPRF3(AtSCL4)とSPRF4(AtSCL15)は異なるサブファミリーに属するGRAS因子である。AtSCL4p:GUSやATSCL15p:GUSの形質転換植物を用いた解析から、AtSCL4とAtSCL15の発現はいずれも糖に応答して転写レベルで制御されているが、互いに発現部位が異なることが明らかになった。AtSCL4あるいはAtSCL15の過剰発現によって発現が増加する遺伝子には,糖誘導性遺伝子に加え、ジャスモン酸(JA)生合成に関わるAOS、JA応答性のVSP、PDF1.2など多くのJA関連遺伝子が共通に含まれていた。AtSCL4とAtSCL15の発現はMeJAで誘導されず、またAtSCL15とAOSの発現部位は類似している。糖によるAtSCL4、AtSCL15の発現は、JA合成活性の調節を通して一群のJA応答性遺伝子の発現を制御している可能性について、更なる検証を進めている。