抄録
COP9シグナロソーム(CSN)は、8つのサブユニットから成る核内タンパク質複合体である。CSNは生物の発生と分化に不可欠で、その機能不全個体は動植物で致死になる。また、CSNにはE3ユビキチンリガーゼ活性を調節する脱Rub活性があり、タンパク質の分解を調節する。
そこでCSNの分子機構を解析するため、CSN1サブユニットに着目して研究を進めた結果、そのN末端部位(CSN1N)がヒトのJNK1/SAPK情報伝達経路の信号を抑制することが判明した。この抑制がタンパク分解系を介さない新規の制御であることがわかったので、CSN1Nに直接結合する因子(NBP)群を動物培養細胞より単離した。NBPとして、SAP130、DDX15/hPrp43/mDEAH9、CFIm68など、それぞれRNAの転写、スプライシング、ポリA付加に関わる因子が同定され、CSNのmRNA代謝制御に関わる新規機能を強く示唆した。
次に遺伝学的・逆遺伝学的手法が確立しているシロイヌナズナに実験系を移し解析を進め、植物のNBP相同遺伝子を同定した。さらに、植物のNBPとCSNとが特異的に相互作用することが判明したので、その機能解析を個体レベルで行なっている。現在、植物に固有なNBPを同定し動植物におけるCSN機能の異同の解析を進めている。