日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのシグナルペプチドペプチダーゼの組織特異的発現および細胞内局在
*田村 倫子朝倉 富子植村 知博上田 貴志寺内 かえで阿部 啓子
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p. 807

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抄録
シグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)は複数膜貫通型のアスパラギン酸プロテアーゼで、アルツハイマー病に関連するプレセニリンのホモログとして2002年に本体が単離された。SPPは膜内に2箇所の活性部位(YDおよびGXGD)を持ち、シグナルペプチダーゼにより切断された後のシグナルペプチドを基質とする。ヒトでは免疫応答に関与し、自己の細胞が健全であることを細胞外に提示するシグナル分子を生産する機能を担っている。植物にも推定一次構造からSPPの存在が確認されているがその発現や機能は全く解明されていなかった。
シロイヌナズナ・データベースを検索した結果、シロイヌナズナのSPP(AtSPP)に相同性を持つホモログが5種存在した。吸水種子における発現をin situハイブリダイゼーションにより検討すると、いずれの分子も幼根の表皮の一部と、シュートメリステムに発現していた。一方、花芽を持った茎頂においてはAtSPPが茎頂分裂組織(SAM)全体に発現していたのに対し、ホモログはSAMには発現しておらず、維管束を形成する髄状領域の下部で、細胞分裂の盛んな組織に発現していた。また、GFPとの融合タンパク質をシロイヌナズナ培養細胞(‘Deep’cells)に発現させたところ、AtSPPがヒトSPPと同様に小胞体膜であるのに対し、ホモログはエンドソームに局在していた。このような発現部位の特徴からAtSPPとそのホモログは生体内で異なる機能を有すると推定された。
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© 2007 日本植物生理学会
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