抄録
花色の主成分であるアントシアニンのうち、アントシアニジン3-グルコシドにいたる生合成経路は殆どの高等植物で共通で、アントシアニジン3-糖転移酵素(A3GT)が糖転移を触媒する。その後、他の糖転移酵素により5位などに糖が付加することが多い。しかし、バラでは、1種類の糖転移酵素(アントシアニジン5,3-糖転移酵素)によってアントシアニジンの5位にグルコースが転移したあと3位にグルコースが転移すると報告された(Ogata et al. 2005)。我々はバラのゲノムライブラリーから、A3GTと同じ糖転移酵素ファミリーに属する酵素(RhA3GT)遺伝子を取得した(同一性46-57%)。RhA3GTは、in vitroにおいてアントシアニジンの3位への糖転移活性を有していた。本遺伝子のバラ花弁における発現レベルはノザンでの検出限界以下であった。一方、バラのcDNAライブラリーから、同じファミリーに属し他のA3GTと42-44%程度の同一性を示す蛋白質(RhF3GT)をコードする遺伝子を得た。RhF3GTは、in vitroにおいてアントシアニジンではなくフラボノールに対する糖転移活性を示した。RhF3GT遺伝子の発現をRNAi法により抑制したバラ形質転換体の花弁ではアントシアニン含量が減少し、花色が白色または淡色に変化した。バラにおけるアントシアニジン配糖化機構について議論する。