抄録
シロイヌナズナにおいて、葉緑体光逃避運動は青色光受容体フォトトロピン2(phot2)により制御されており、phot2変異体では光集合運動のみ観察される。ヘテロ型(PHOT2/phot2-1)個体の葉緑体光逃避運動の逃避速度は野生型(PHOT2/PHOT2)個体に比べて遅くなる。これは光受容体の量的発現制御による青色光応答調整を示唆している。そこで、光受容体の量的発現と青色光応答との関係を明らかにするため、phot2タンパク質の発現量を制御した形質転換体を作出し、詳細な解析を行った。
CaMV 35Sプロモーターおよびphot2プロモーター領域に結合したPHOT2-GFP(35S::P2G、phot2::P2G)をphot1phot2欠損変異体に導入した。作出した形質転換体のP2G発現量はイムノブロット解析から野生型に比べて0~20倍程度であった。形質転換体の青色光応答を確認した結果、PHOT2発現量が増えた個体では葉緑体光逃避運動の逃避速度が増加した。しかし、通常の光環境において葉の伸展はphot2の発現量には依存せず、全て野生型と同程度であった。本研究の結果、それぞれの青色光応答の制御に必要な発現量の閾値が異なることが明らかになった。