日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネ障害型冷害における遺伝子発現変動の網羅的解析
*加藤 英樹佐藤 裕今井 亮三
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p. 885

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抄録
イネの冷害は出穂直前の植物体が比較的穏やかな低温に長く置かれることにより起こる。この現象は、タペート細胞の機能不全により雄性配偶子の正常発達が阻害された結果と考えられているが、この分子生物学的基盤は不明である。そこで本研究では、冷害発生における遺伝子発現変動の全体像を掴むことを目的とし、低温処理及びその後の回復期間におけるイネ葯発現遺伝子のトランスクリプトーム解析を行った。小胞子期のイネを2日間及び4日間低温処理し、これを通常の栽培条件下にもどした場合の稔実率を比較したところ、無処理区の稔実率94%に対し、2日間の低温処理では若干の減少(70%)がみられたが、これに対し、4日間処理では劇的に低下(25%)した。この結果より、2日間低温処理ではある程度回復可能で、4日間処理では回復不能な生理学的変化が稔実率低下の原因と考えられた。そこで2日間及び4日間低温処理した植物体(2d、4d)と低温処理後1日間通常の生育条件下に戻した植物体(2d+1、4d+1)の葯からRNAを調製し、無処理区植物体葯RNAを比較対象としてマイクロアレイ解析を行なった。主要代謝経路における遺伝子の発現変動及び、特異的な変動を示す遺伝子群を調べた結果、光化学系に関わる遺伝子群が、4日処理後の回復期間で強い発現阻害を受けており、これらの発現レベルの低下と低温による不稔との相関が示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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