抄録
イネ-いもち病菌の感染過程は葉表面への胞子の接着、発芽、付着器形成、侵入糸形成の段階を経る。この感染過程初期における両者の相互作用には未解明の部分が多い。そこで本研究ではイネいもち病菌の発芽や付着器形成という感染の各段階で分化が停止する変異体を用いて、イネの応答を明らかにするため、遺伝子発現の変化、過酸化水素生成やファイトアレキシンの蓄積などについて調べたので報告する。イネ葉面に接着・発芽はするが付着器形成ができない変異体ではイネ細胞における過酸化水素およびファイトアレキシンの蓄積は見られなかった。付着器は作るが感染できない変異体ではファイトアレキシンの蓄積は見られなかったものの、付着器下にスポット状の過酸化水素の蓄積が起こることから、付着期形成の段階でイネはいもち病菌を認識し応答を開始したと考えられた。またこれらの変異株に対するイネの生化学的な応答はR遺伝子ではなく品種に依存した。一方、野生型であるGuy11の接種ではR遺伝子に依存した過酸化水素とファイトアレキシンの蓄積が見られ、また接種2時間にはR遺伝子に依存した遺伝子発現が見られた。これらのことはイネといもち病菌の相互作用において発芽後に既に何らかのシグナルがイネに伝わること、侵入糸形成段階がファイトアレキシン生合成開始に重要であることを示唆した。