抄録
造礁サンゴは、刺胞動物のサンゴ虫と褐虫藻と呼ばれる渦鞭毛藻類の共生体である。この共生システムの相互依存性は非常に高く、サンゴのエネルギー要求量の80%以上は褐虫藻の光合成によるものである。褐虫藻とは別に、造礁サンゴの炭酸カルシウム骨格内に、多種の緑色微生物が存在していることが示唆されている。しかし、骨格内緑色微生物と宿主サンゴの生物学的相互作用は不明のままである。本研究では、琉球列島の代表的造礁サンゴであるAcropora digitiferaを用いて、骨格内微生物が宿主サンゴの光合成に与える影響を調べた。サンゴ共生体の光合成最大量子収率(Fv/ Fm)を水中用PAMクロロフィル蛍光測定装置(diving-PAM)によって測定した。短期実験において、至適温度条件でサンゴ群体に強光処理をおこなった場合、骨格内微生物を持つグループは高いFv/ Fmを維持できることが明らかとなった。しかし、両グループ間の強光阻害の程度は、高温ストレス条件下では明確に現れなかった。強光阻害抑制作用がサンゴの生理に与える効果を見るために、屋外水槽を用いて6ヶ月に渡る長期モニタリングをおこなった。その結果、光強度が強い8月では、骨格内微生物を持つグループが高いFv/ Fmを維持することがわかった。得られた短期室内生理実験と長期モニタリングの結果は、強光条件下において骨格内微生物が、宿主サンゴのFv/ Fmを維持し、強光阻害から保護していることを示唆している。