抄録
シロイヌナズナにおいて、メチオニン生合成の鍵酵素であるシスタチオニンγ-シンターゼをコードするCGS1遺伝子の発現は、メチオニンの代謝産物であるS-アデノシルメチオニン (SAM)に応答して mRNA安定性の段階でフィードバック制御される。この制御にはCGS1遺伝子のコード領域のN末端側に存在する14アミノ酸の領域(MTO1領域)が関与する。小麦胚芽由来のin vitro翻訳系を用いた解析から、CGS1 mRNAの特異的分解が誘導される前に、SAMに応答して翻訳伸長の一時停止が起こることが明らかになった。また、この翻訳アレストはMTO1領域のすぐ下流で起こることが、トープリント解析などによって示された。MTO1領域は自身をコードするmRNAの制御にのみ関与するが、翻訳アレストにはMTO1領域の塩基配列ではなくアミノ酸配列が重要であることが示された。これらのことから、SAM存在下でCGS1 mRNAが翻訳されると、新生CGS1ポリペプチド鎖上のMTO1領域が自身を翻訳したリボソームの中で機能して翻訳アレストを引き起こすと考えられる。翻訳アレストに引き続いてmRNA分解が誘導され、その際に5’側領域を欠いたmRNA分解中間体の蓄積がみられる。このmRNA分解中間体の解析から、翻訳アレストを起こしたリボソームの5’側近傍でmRNAが切断されることが示唆された。