抄録
植物の生産性増加の研究は、様々な環境変化やバイオエネルギー需要への要求を満たすために重要になってきている。我々は光合成反応に注目し、イネ完全長cDNAをシロイヌナズナにおいて過剰発現させたイネーナズナFOXラインを用いて、有用な遺伝子の同定を目指した研究を行っている。スクリーニングには、クロロフィル蛍光を二次元画像として経時的に測定できるシステムを用いた。これまでに約9,000ラインを測定し、野生型と異なるクロロフィル蛍光挙動を示す37ラインを単離した。候補株から単離したcDNAを用いて再度シロイヌナズナの過剰発現体を作成したところ、13ラインがオリジナルのラインと同じ表現型を示した。原因遺伝子には機知の光合成関連遺伝子や機能未知の遺伝子が含まれていた。候補株はクロロフィル蛍光パラメーターの違いにより数パターンに分類された。そのうちFv/Fm・qP・φIIが低い3つの候補株を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、共通して発現が変化する遺伝子が存在した。この結果から、共通して制御されている遺伝子セットの発現変化により同様な表現型が引き起こされている可能性が考えられる。また候補株を用いてメタボローム解析も行っており、各カテゴリーで共通して変化する代謝産物が存在した。本研究は平成17年度科学技術振興調整費「イネ完全長cDNAによる有用形質高速探索」によって行なわれている研究である。