抄録
Rubiscoの活性化状態は、Rubisco activaseを介してATP/ADP比、ストロマの還元状態およびΔpHによって制御されている。しかしながら、それらに影響を与えるオルタナティブな電子伝達活性を含めた電子伝達系からのRubiscoの活性化状態の制御機構について調べた知見がない。
そこで本研究では、イネを材料に温度・CO2分圧・形質転換によるRubisco量変化における光合成CO2交換速度、ならびにPSIIとPSIの量子収率の3点を同時測定し、合わせてParry et al. 1997らの方法に準じて、Rubiscoの活性化状態を測定した。
その結果、温度変化に対するRubiscoの活性化状態は、低温域で高い傾向があり、高温域においては、42℃を超えると60%程度まで低下した。ΦPSI/ΦPSIIおよびNPQも低温域で高く、42℃を超えると再びNPQは上昇した。また、CO2分圧変化に対するRubiscoの活性化状態は、ΦPSI/ΦPSIIおよびNPQの上昇が観察された低CO2分圧条件下において高く、高CO2分圧条件下において低かった。さらに、rbcS形質転換体イネにおけるRubiscoの活性化状態は、ΦPSI/ΦPSIIおよびNPQの上昇が観察されたrbcS-antisenseイネ(Rubisco量WTに比べて33%)で高く、rbcS-senseイネ(Rubisco量WTに比べて150%)では低かった。
以上のことから、低温・低CO2分圧・低Rubisco量条件下では、PSI cyclic電子伝達を駆動し、ΔpHを介して高いRubiscoの活性化状態を維持していると考えられた。