抄録
水生光合成生物であるクラミドモナスは環境中のCO2濃度が低下すると無機炭素濃縮機構(CCM)を誘導し、低CO2ストレスに順化することが知られている。我々はCCMが誘導される時に発現が誘導される遺伝子群をcDNAアレイ解析により網羅的に同定し、CCMに関与する候補遺伝子を複数見出している。LCIBは高CO2条件でも細胞内に存在するが、低CO2条件に移すことで発現が強く誘導される。またLciB欠失変異株であるpmp1とad1は低CO2条件(350-400 ppm)において生育できず、LciBのRNAi株も低CO2条件において生育速度が著しく遅延することから、LCIBは低CO2条件における光合成活性の維持に必須であることが示された。また、間接的免疫蛍光染色法及び免疫電子顕微鏡法により、LCIBは低CO2条件において発達するピレノイド構造の周囲に局在することが示された。LCIBのオルソログは高等植物には見つからず、CCMをもつミカヅキモやシアノフォラなどの多くの藻類に見いだされることから、水生環境における光合成の低CO2順化において広く機能していることが示唆される。LCIBのRNAi株の表現型と細胞内局在から推測されるLCIBの機能について議論する。