抄録
ジャスモン酸(JA)は植物の病害抵抗性発現において二次シグナル物質として働く植物ホルモンである。植物の病害抵抗性発現におけるJAを介したシグナル伝達経路の解明を目指し、イネ培養細胞を用いてJA応答性遺伝子の単離を行ってきた。その過程で、我々はbHLH型転写因子をコードするRERJ1をJA早期応答性遺伝子として単離した。前年度大会において、RERJ1が転写活性化因子として機能すること、クラス4キチナーゼをコードするOsChia4aの発現誘導に関与することを報告した。
本発表では、RERJ1によるOsChia4aの発現誘導メカニズムを明らかにするため、OsChia4a上流域の解析を行い、JA応答性シスエレメントを同定した。デリーション解析の結果、翻訳開始点上流-515 bpから-265 bpの領域にJA応答性シスエレメントが存在することが明らかになった。次に、この領域に存在する3つのE-boxについてミューテーション解析を行ったところ、翻訳開始点上流-448 bpから-443 bpにあるE-boxがJA応答性シスエレメントとして同定された。また、このE-boxはRERJ1依存的な発現誘導にも必要であった。現在、RERJ1がこのE-boxに直接結合することで発現制御をしているかどうかを追求するため、クロマチン免疫沈降法による解析を進めている。