抄録
ダイナミンは自己重合能を持つGTPaseであり、エンドサイトーシス、細胞板形成、ミトコンドリア融合、オルガネラ分裂など生体内の様々な膜の分裂・融合にはたらいている。そのメカニズムはいくつものモデルが立てられているが、生体内での動態はわからない部分が多く、多様な現象をすべて説明できるには至っていない。なかでも、巨大な葉緑体のくびれ切りは小胞をモデルとした現在の仮説ではとうてい説明できない。葉緑体の分裂期にはダイナミン様タンパク質ARC5が分裂面にリング状に局在すること、arc5変異体では葉緑体の数が著しく減少することから葉緑体分裂に重要な役割を果たしていると考えられるが、実際にダイナミンがどのようにして葉緑体を分裂させるのかはわかっていない。そこでダイナミンによる葉緑体分裂のメカニズムの解明を目指し、ARC5の様々な位置にアミノ酸置換を導入したものと蛍光タンパク質GFPとの融合タンパク質をARC5プロモーターによってarc5変異体に発現させ、葉緑体数とタンパク質局在を観察した。変異タンパク質のうち、GTPaseドメインに変異を導入したものでは、葉緑体の分裂面にGFPの蛍光がリング状に局在するが、葉緑体数が減少する表現型は相補しなかったことから、分裂面への局在にはGTPase活性は必要ではないが、正常な分裂には必須である可能性が考えられた。その他の変異タンパク質の解析とあわせ、ダイナミンの葉緑体分裂時の動態を考察する。