抄録
トランスクリプトミクスとメタボロミクスの統合解析やDNAアレイの公開データの解析により、シロイヌナズナの様々な条件下で同調的に制御される遺伝子群および代謝産物群の予測が可能になった。これらのオミックス解析は、同一代謝経路で働く生合成遺伝子群およびその転写制御因子の機能予測に有効である[1]。本研究では、オミックス解析から推定されたメチオニン由来グルコシノレート (MET-GSL) 生合成の転写制御因子 PMG1, PMG2, PMG3 の過剰発現株と機能破壊株およびその掛け合わせ体の代謝産物と転写産物を解析した。その結果、最も顕著な変化が見られた転写制御因子のダブルノックアウトラインpmg1pmg2では、種子およびロゼット葉で MET-GSL が検出されず、トリプトファン由来のインドールグルコシノレートのみが検出された。また DNA マイクロアレイで転写レベルを測定した結果、 pmg1pmg2では野生型と比較してMET-GSL 生合成に関与する既知および候補遺伝子と PMG 3 の発現が顕著に減少した。さらに、PMG2過剰発現株の種子では、野生株の約10倍にMET-GSLが増加した。これらの結果から、PMG1とPMG2は、MET-GSL生合成遺伝子の主要な転写制御因子であることがわかった。現在、機能未知のPMG3およびMET-GSL生合成遺伝子候補の機能解析を行っている。[1] PNAS 104, 6478-6483