抄録
エチレンシグナル伝達系で機能するEIN3のタバコホモログであるTEIL(Tobacco EIN3-like)は,タバコ酸性PR1遺伝子のプロモーター領域に結合する転写因子として単離された(Kosugi and Ohashi, 2000).我々はこれまでに TEIL過剰発現タバコおよび抑制タバコの解析から,TEILはbasic PR遺伝子の発現や花器形態形成へ関与すること(Hibi et al., 2007),さらに傷害に応答したエチレン放出にも関与することを示唆してきた.シロイヌナズナではEIN3がERF1の発現を制御すると報告されているが、タバコではTEILがエチレン応答性の既知ERF遺伝子群の発現に影響を及ぼすかどうかについては分かっていない.そこで, TEIL発現抑制体におけるこれらERF遺伝子の発現誘導を調べたところ,この組換えタバコでは NtERF2遺伝子のACC誘導性発現が抑制されることが分かった.また,病害抵抗性に果たすTEILの役割を明らかにするためにTEIL過剰発現体およびTEIL発現抑制体のタバコ腰折れ病菌に対する応答を経時的に調べたところ,野生型と比較して枯死に至るまでの期間に差がみられることが分かった.これらの結果は,TEILが下流の転写因子の発現を介してエチレンシグナル経路に関与していること,また,ある種の病害抵抗性に関与していることを示唆する.