抄録
植物は病原体のMAMP(microbe-associated molecular patterns)を認識し、防御応答を誘導する。これに対し病原細菌は、進化の過程でタイプIIIエフェクターのような防御応答抑制因子を獲得し、一方で植物はさらに個々の防御応答抑制因子を特異的に認識する抵抗性(Resistance, R)遺伝子を獲得したと考えられる。植物のR遺伝子を介した防御応答において、サリチル酸シグナリングは主要な役割を果たしている。しかし、MAMPによって誘導される防御応答とサリチル酸シグナリングとの関係は明らかにされていない。本題では、シロイヌナズナでのMAMPシグナリングとサリチル酸シグナリングの相互作用を報告する。我々の観察では、1)MAMPの一種であるflg22によってサリチル酸の蓄積が見られた。2)flg22によって誘導される遺伝子発現変動は、ある遺伝子群においてサリチル酸依存的であった。3)flg22処理によって誘導される病原細菌Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000 (PstDC3000)への抵抗性はサリチル酸シグナリングに部分的に依存していた。これらの結果はflg22によって誘導される防御応答において、サリチル酸シグナリングが重要な役割を果たしていることを示す。現在、flg22によって誘導されるサリチル酸蓄積のメカニズムを解析している。