抄録
病原体からのさまざまな阻害を受けても防御応答を達成するために、植物の防御応答は複雑かつ密なネットワーク構造をもつシグナル伝達ネットワークを発達させた。このようなシステムを理解するには、個々の遺伝子機能だけでなく、ネットワークレベルでのシグナル伝達を明らかにすることが必要である。この課題に取り組む為に我々はシロイヌナズナ-Pseudomonasの系を使って、遺伝子発現プロファイリングを組み合わせた逆遺伝学的アプローチをとった。まず、防御シグナル伝達ネットワークの様々な箇所が阻害されている25変異体にバクテリアを接種し、遺伝子発現プロファイルを取った。次に非線形次元圧縮アルゴリズムを用いて、それらのプロファイル間の類似性を分析した。結果として、既知および新たに予想された遺伝子相互作用を含むシグナル伝達ネットワークモデルを構築した。これを使って、我々は1) サリチル酸を介するサブネットワークのシグナル増幅様式、2)複数の拮抗するシグナル伝達サブネットワークによるシグナル伝達制御などについてモデルを立て、検証中である。