抄録
過敏感細胞死は、植物が非親和性病原菌を認識したときに速やかに誘導される免疫反応の一つであり、DNAの断片化や核の収縮などを伴うプログラム細胞死である。これまでに我々は、過敏感細胞死の誘導に植物特有の転写因子であるOsNAC4が関与することを明らかにしてきた。そこで、OsNAC4による過敏感細胞死の誘導機構について検討した。まず、OsNAC4の局在について特異抗体を用いて調べたところ、過敏感細胞死誘導時特異的に核に局在化することが明らかになった。また、過敏感細胞死誘導時にリン酸化阻害剤であるStaurosporineを加えたところ、過敏感細胞死の抑制が認められ、OsNAC4の核への移行も阻害されることが明らかになった。このことから、OsNAC4の核移行にはリン酸化が必須であることが示唆された。次に、OsNAC4のRNAi抑制体を用いたマイクロアレイ解析を行ったところ、分子シャペロンであるOsHSP90をコードする遺伝子の発現がOsNAC4によって制御されていることを見いだした。そこで、OsHSP90をイネ培養細胞内で一過的に過剰発現させたところ、細胞死の誘導が認められた。現在、OsHSP90を介した細胞死誘導の詳細な機構について解析を行っている。