抄録
マメ科植物は根粒菌と共生し、窒素固定を行う機能を有するが、この高度に制御された共生関係の確立と維持において、多くの代謝物の相互輸送が重要な役割を担っている。ATP-binding cassette(ABC)タンパク質は細菌からヒトまで生物界に広く分布し、植物の生命活動において多様な生理機能を担っている。根粒形成過程においても大きな発現変動を示すABCタンパク質が複数見いだされ、ABCタンパク質の根粒形成への関与が示唆されている。本研究では、マメ科のモデル植物であるミヤコグサにおけるABCタンパク質の全ゲノム的解析と、リアルタイムPCR法による発現プロファイルの結果から、ミヤコグサに特徴的なクレードに存在し、根粒形成によって最も顕著に発現調節される遺伝子LjPDR1(LjABCG1)に着目し、詳細な解析を行った。ミヤコグサの実生を用いて植物ホルモンを含む種々の化合物への発現応答を解析したところ、LjPDR1はメチルジャスモン酸に対して最も顕著な正の応答を示した。また、地上部へのジャスモン酸処理により、根での発現が800倍にまで増加することが見出された。LjPDR1の細胞内局在性は、不連続ショ糖密度勾配遠心法、及び水性二層分配法により、細胞膜局在であることを明らかにした。年会では、Promoter::GUS形質転換体による組織発現解析やRNAi植物の表現型解析の結果も併せて報告する。