抄録
陸上植物の葉緑体では、RNA上のCをUへと変換するRNA編集と呼ばれる作業が高頻度に行われている。個々の植物は特有の編集サイトパターンを持つことから、RNA編集は進化の過程で誕生と消失を繰り返してきたと考えられる。タバコN. tabacumは、祖先種と考えられているN. sylvestrisとN. tomentosiformisの自然交雑によって生じた異質複二倍体である。そのため、これらタバコ属植物は、葉緑体RNA編集の進化を研究する上で非常に優れた材料として用いられてきた。我々は、これら植物における葉緑体ndhDの開始コドンを作製するRNA編集部位(ndhD-1サイト)のRNA編集を調べた結果、N. tabacumとN. sylvestrisに比べて、N. tomentosiformisではndhD発現に影響は与えないもののRNA編集効率が低下していることを明らかにした。シロイヌナズナではndhD-1のRNA編集にはトランス因子として働くPPRタンパク質、CRR4が必須である。現在、N. tomentosiformisにおけるndhD-1 RNA編集効率の低下は、タバコCRR4オルソローグの機能が低下しているためではないかという作業仮説を立て、タバコ祖先種から単離したCRR4の解析を行っている。