日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

苔類ゼニゴケにおけるプラスチドDNAの複製と遺伝様式の解析
*千代田 将大石崎 公庸大和 勝幸河内 孝之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0226

詳細
抄録

プラスチドDNAの複製と遺伝は植物にとって必須のメカニズムである。本研究では、陸上植物の間で高度に保存された遺伝子構成のプラスチドDNAを持つ苔類ゼニゴケを材料に、プラスチドDNAの複製と遺伝様式を明らかにすることを目的としている。基盤技術として、ゼニゴケの培養細胞と植物体の高効率なプラスチド形質転換系を構築し、ホモプラズムな植物体プラスチド形質転換株を短期間で確立することができた。プラスチド形質転換株と野生株との交配によって得られた胞子が、母方のプラスチドの遺伝子型に依存してマーカー遺伝子の発現による薬剤耐性を示したことから、ゼニゴケのプラスチドDNAは母性遺伝することが示された。一方、プラスチドDNAの複製様式を調べるために、増殖の盛んなゼニゴケ培養細胞のプラスチドDNAから一本鎖DNAを調製してサザン解析を行った。逆位反復配列中の23S rRNA遺伝子付近が一本鎖DNAに富んだ領域であることが示唆されたため、その近傍領域の複製中間体DNAの構造をアガロースゲル二次元電気泳動によって解析した。小単一コピー領域から進行する複製フォークが逆位反復配列との境界付近で停止した複製中間体DNAが見出された。これは、複製フォークがrRNA遺伝子オペロンの転写装置と衝突することを防ぎ、逆方向の複製フォークが到達するまで複製フォークを停止させる領域をプラスチドDNAが持つことを示唆する。

著者関連情報
© 2008 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top