抄録
雌性配偶体は被子植物の生殖に関するほぼすべての段階で重要な働きをもつことが明らかにされてきている。雌性配偶体のもつ重要な機能のうちの一つに、花粉管ガイダンスがある。東山ら(2001)は花粉管ガイダンスには雌性配偶体内の助細胞が必要であることを突き止めた。このように、助細胞の機能的な知見は広がってきているとはいえ、どのような遺伝子産物がこの助細胞の機能に関与しているのかという分子生物学的な知見はほとんど存在しない。そこで、演者はReverse Geneticsの手法を用いて助細胞の遺伝子制御ネットワークを同定するというプロジェクトを米国のユタ大学で開始した。 このようにして演者によって同定された遺伝子がMYB98である。MYB98遺伝子は助細胞のみで発現が見られ、myb98変異体は花粉管を誘導できない表現型を持っていることがわかった。このことにより、MYB98が花粉管ガイダンスに必要であることが判明した。助細胞のみで発現し、かつ機能している転写因子として世界で初めて同定されたMYB98は多くの重要な機能をもつ助細胞の遺伝子制御ネットワーク解明への突破口となるものである。そこで演者は、様々な遺伝学的アプローチによりMYB98周辺遺伝子の解析に着手することになった。今回はそのアプローチ方法についても発表の予定である。