抄録
L-アラビノフラノース残基は植物細胞壁中に多く含まれる重要な構成単糖である。細胞質で合成されたUDP-L-アラビノピラノース(UDP-Arap)は、細胞壁アラビノースの直接の前駆体であるUDP-L-アラビノフラノース(UDP-Araf )へと酵素的に変換される。我々はUDP-アラビノースの相互変換活性をイネ実生で見出し、酵素「UDP-アラビノースムターゼ (UAM)」の精製を行なった。UAMによる変換反応は可逆であり、UDP-ArapとUDP-Arafの比は90:10で平衡に達した。精製イネUAMのアミノ酸配列解読の結果、イネは3つの遺伝子UAM1, 2, 3を持ち、これらはアミノ酸レベルで80%以上の高い相同性を持っていた。また、UAMはReversibly glycosylated polypeptide (RGP) と呼ばれていた機能未知タンパク質と同一であった。さらに詳細な解析を行うため、UAM1, 2, 3それぞれについてバキュロウイルス発現系により組換えタンパク質を作製し、酵素の特徴づけを行なった。その結果、組換えUAM1および3はムターゼ活性を有し、類似した酵素特性を示したが、組換えUAM2は不活性型であった。UAMは植物界に広く保存されており、アラビノフラノースの生合成の最終段階に関与することから、UAMの機能は植物の生育に必要不可欠であると考えられる。