抄録
RNAサイレンシングは真核生物で広く保存された遺伝子制御機構で発生段階の制御やウイルス抵抗性など様々な生命現象に関与している。RNAサイレンシングでは20塩基程度のsmall RNA分子が重要な役割を担っている。Small RNAは相補的な配列を持つ標的に結合し、mRNAの翻訳阻害や分解による転写後制御、及びクロマチンの修飾による転写制御を誘導する。最も研究されているsmall RNAはmicroRNA (miRNA)である。シロイヌナズナにおいてmiRNAはステムループ構造を形成するmiRNA前駆体転写産物からRNaseIII酵素であるDICER-LIKE 1 (DCL1)によって切り出される。このDCL1はHYL1及びSERRATEタンパク質と協同的に働きmiRNA/miRNA*二本鎖を生成する。miRNAはRNA-induced silencing complex (RISC) に取り込まれ、相補的な配列を持つ標的mRNAと結合し、RNA切断活性を持つARGONAUTE 1 (AGO1)を介して標的mRNAを切断する。このように、これらの因子がmiRNAの生成過程及びmRNAの負の制御に関与する基本的な役割は明らかとなってきた。しかしmiRNAによるこのような遺伝子制御が実際に植物の発生や生理状態にどのように関与するのかまだあまり研究されていない。そこでわれわれはmiRNAの蓄積が野生型に比べて減少するhyl1変異体に着目し、植物の形作りが組織・器官レベルでどのようにmiRNAによって制御されるかについて解析を行った。さらにmiRNA経路に関与する新たな因子が存在する可能性についても述べたい。