日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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成熟葉緑体チラコイド膜の構造変化とこれに伴う葉緑体の機能変化
*野末 はつみ鈴木 健二渋谷 奈々恵金子 康子園池 公毅林田 信明
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p. 396

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抄録
シロイヌナズナの成熟葉において、葉緑体チラコイド膜の構造変化を示唆する新たな微細構造については昨年の本大会で既に報告した。また、このようなチラコイド膜の変化は、他の陸上植物に広く観察された。ここでは、明確なグラナ・ストロマ構造を持ち、従来成熟チラコイドと称されているチラコイド膜(L型)を持つ葉緑体と、湾曲したグラナ構造を持つ構造変化型チラコイド(C型)を持つ葉緑体の機能的相違について報告する。L型チラコイドを持つ栄養成長期の葉(RI)と抽だい後の完全展開葉および新葉(RIF,RII)について、次の比較を行った。1.クロロフィル含量;クロロフィルa,b供にC型で高い値を示した。また、a/b値はC型で低かった。2.光合成活性;CO2の吸収量から測定した炭酸同化活性、およびクロロフィル蛍光解析により得られたFv/Fm, qp, ΦII および NPQの値に有意な差は認められなかった。3.光合成産物;光照射下における葉緑体内のデンプン蓄積量に違いが確認され、合成量ではなく転流量の違いによるものと考えられた。以上の結果から、陸上植物の葉の成熟葉緑体には、それぞれの機能的な役割分担を持つ2つの形態があり、相互変換の可塑性が備わっているのではないかと考える。
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© 2007 日本植物生理学会
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