日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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フェムト秒時間分解吸収分光による光合成系カロテノイドの3Ag-状態の検出
*三木 健嗣柿谷 吉則李 春勇小山 泰長江 祐芳
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p. 0318

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抄録
植物におけるカロテノイドからクロロフィルへのエネルギー伝達は、カロテノイドの内部転換に競合して起こる。全トランスカロテノイドには種々の対称性を持つ一重項励起エネルギー準位があり、光合成系でのエネルギー伝達は、これらのエネルギー準位での内部転換と振動緩和により制御されている。本研究はこれらのエネルギー準位をフェムト秒時間分解吸収分光で検出することを目標とした。
光合成系カロテノイドには、異なる共役二重結合数nをもつカロテノイドが存在し、Tavan and Schultenの計算結果から求めたエネルギーダイアグラムより、励起状態のエネルギー準位は高いものからn = 11 ~ 13では1Bu+, 3Ag-, 1Bu-, 2Ag-となっている。当研究室では主に1Bu+, 1Bu-, 2Ag-に関して研究を行ってきたが、3Ag-準位に関しては光学禁制であり、ほとんど情報が得られなかった。そこで本研究では極性溶媒であるTHFを用い、約30 fsのパルス幅のフェムト秒時間分解吸収分光での測定を試みた。本実験では共役二重結合数n = 9 ~ 13のカロテノイドを対象にして、検出されたピークをエネルギーダイアグラムに沿って帰属した。
測定の結果、初期の時間領域で光学活性な1Bu+からの誘導蛍光とは別に、幾つかの低エネルギーな準位からの誘導蛍光がみられた。この測定で検出された誘導蛍光ピークをエネルギーダイアグラムにより帰属したところ、3Ag-状態、1Bu-状態からの蛍光であることがわかった。
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© 2008 日本植物生理学会
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