抄録
FOX Hunting Systemは完全長cDNAを用いて多数の遺伝子の機能を解析する手法である.我々はこの手法を利用して,植物に有用形質をもたらすイネの遺伝子の探索を進めている.このため,約13,000種類のイネ完全長cDNAを高発現する形質転換シロイヌナズナ(イネFOXライン)を20,000以上作成した.本研究では,高塩ストレス耐性に関わるイネ遺伝子を明らかにするため,作成したイネFOXラインのT2種子を150mM NaClを含む培地上に播種した.その結果,発芽や生育が良好な耐塩性候補が208ライン得られた.これらのうち,gPCRによって181ラインに導入されているイネcDNAを同定した.さらに,これまでに17遺伝子についてシロイヌナズナに再導入を行い,12遺伝子で表現型の再現を確認した.これらの遺伝子の多くは高塩ストレス耐性との関連性が報告されていないものであった.このようなラインの一つとして単離されたラインR07047にはカルシウムを介した脂質結合に関わるC2ドメインタンパク質をコードする遺伝子が挿入されていた.また,このラインは高浸透圧ならびに乾燥ストレスに対しても耐性を示した.現在,このラインの詳細な解析を行っている.本研究は科学技術振興調整費の支援の下に行われた.