抄録
植物がNaClにさらされると、Na+またはCl-が体内に吸収・蓄積して障害が引き起こされる。我々はこれまでにシロイヌナズナやイネの膜タンパク質PMP3が植物のNa+の吸収抑制に関与し、耐塩性に重要であることを見いだした。本稿では、PMP3遺伝子欠損酵母を用いて、イネおよび酵母PMP3の様々なイオンホメオスタシスにおける機能解析を行った。酵母の野生株、PMP3遺伝子欠損株(Δpmp3)およびΔpmp3に酵母PMP3またはイネOsPMP3-3遺伝子を導入した酵母(Δpmp3+PMP3, Δpmp3+OsPMP3-3)を作製し、様々な塩を含む培地において成長させた。その結果、それぞれの塩に対する表現型は、野生株と比較して、1)Δpmp3において感受性が高いもの、2) Δpmp3において耐性が高いもの、3)Δpmp3+PMP3導入株において感受性が高いもの、4)違いなし、の4つが見られた。興味深いことに、Δpmp3株では熱ストレス(37℃)に対する感受性も高かった。
以上より、イネおよび酵母のPMP3は、イオン輸送の駆動力となるプロトンの輸送に直接的または間接的に関わることにより、様々なイオンのホメオスタシスに関わることが示唆された。