日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
超音波診断装置を用いた嚥下時の舌骨動態解析
藪中 幸一橋本 務真田 茂友利 敦永来 努大植 睦
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2008 年 12 巻 2 号 p. 135-140

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抄録

【目的】健常者を対象にUltrasonography (US) における嚥下時の舌骨動態を解析した.

【対象と方法】対象は,健常成人で20歳代5名,30歳代5名,40歳代5名の合計15名とした.舌骨の描出方法は,被験者の姿勢を坐位とし,体動を防ぐために壁を背にして姿勢を固定した.プローブはBモード画像上で正中矢状断が描出できるように顎下部にあて,舌骨が画面の中心となるようにした.舌骨は,舌骨の後方陰影を伴った高エコー域として描出した.この状態において,5mlの飲用水を嚥下する際の舌骨動態をUSによって3秒間の撮影を行った.計測回数は,舌骨が十分に追跡可能な画像が撮影できた5回を採用した.画像解析ソフトはimage Jを用い,フレームレート30 fpsで3秒間撮影した.この動画を基に,1コマごとのずれを追跡し,安静時を基点とした舌骨の可動範囲(水平方向移動距離,垂直方向移動距離)を計測した,

【結果】今回我々は,健常者を対象にUSによる舌骨運動を解析したが,比較的容易に舌骨を観察することができた.全ての症例において,USによる舌骨運動は,VFで見られる舌骨運動と同様の(挙上後退・挙上前進・停滞・下降後退運動)の運動が確認でき,嚥下時間と舌骨運動の軌跡を正確に計測できた.各年齢層における舌骨運動時間については,全経過時間における20歳代と30歳代及び40歳代の間には,有意差を認めた(P<0.05)が,30歳代と40歳代の間には,有意差が認められなかった (P=0.87).

【結語】今回我々は,USにおける舌骨運動の動態画像を明らかにした.USによる舌骨運動の評価は,嚥下障害の新たな動態画像手法として臨床応用が可能と考えられる.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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